精神科疾患について不安を基盤とした疾患(パニック障害・解離性障害・社交不安障害など)
不安を基盤とした疾患(パニック障害・解離性障害・社交不安障害など)
人生は不安がつきものです。大切な試験の合格できるか不安になることや、大きな仕事が成功するか不安になることは誰しも経験があるのではないでしょうか。人生が変化するときに不安が生じるとも言えます。こうした不安を乗り越えると人生が充実して生き生きと過ごすことができる側面もあるので、必要な感情でもあります。
このように、一時的に不安があるからといって病気とは言い切れませんが、不安が基盤となる病気が多いことも事実です。通常の不安と病気との境目はどこにあるのでしょうか。これは、端的にいえば「生活に支障が生じているかどうか」で判断することが多いです。たとえば大切な試験に受かるか不安なので受けない。あるいは大きな仕事に成功するか不安なので退職する。こうした例は突飛に思えるかもしれませんが実際にあります。ここまで極端でなくとも、不安への直面を回避していくと生活に大きな支障が出てくると言えます。
Ⅰ. パニック障害
パニック障害は、パニック発作、予期不安、広場恐怖などの症状が顕著です。予期しない時に動悸や息苦しさを憶えるパニック発作が主症状です。この症状を起点として予期不安と広場恐怖が不随してきます。これは「パニック発作が起きるのではないか」と予想する不安が強いため、様々なことに支障が出てくる点が特徴です。
Ⅱ. 解離性障害
解離性障害は、「解離」について説明が必要ですが、一般の方が理解するには余りにも複雑な概念なので割愛します。気になる方は、診察時や心理検査時、カウンセリング時にお尋ね下さい。
解離性障害の症状としては、よく知られたものとして以下の四つがあります。
- 解離性同一障害複数の人格が入れ替わる多重人格。
- 解離性健忘記憶の一部分が飛んで、思い出せなくなる。
- 解離性遁走記憶の無いまま、遠い知らない場所に行ってしまう。
- 離人症自分自身の感情がまるで自分のものではないように感じられ、現実感がなくなってしまう。
ただし、上の4つの症状は、瞬間的に起こることが多く、持続時間が短いため、傍目には生活に支障が出ているように見えない場合があります。一見してもわからないがゆえに深刻であると言え、何事も問題がなかった方が急に失踪する場合もありえます。解離性障害に至るには過酷な体験を経ている場合が多いと感じます。過酷さを乗り越えるために淡々と感情を薄めるしか生きる道がなかったと言えます。解離は生き抜くために必要な防衛ですが、常に解離状態でいると「自然な感情がわからなくなる」という副作用が生じます。そのため安心できる環境下で解離を解除する必要が生じるのですが、その際にも不安が生じます。防衛をはずすので当然の心境と言えますが、解離性障害でも不安が登場してくると言えます。
Ⅲ. 社交不安障害
社交不安障害は、社会的場面で強い不安に襲われる点が特徴です。人前で話すなど、他人から視線を集めるような場面で「自分がどう思われているか」が気になって必要以上に強い不安が生じるのです。失敗や恥を予想して、紅潮、発汗、震え、腹痛などのつらい症状を呈することが多いようです。これは明確に強い不安が基盤となっていると考えられます。
治療方針は「薬物療法」が優先的に考えられます。特にパニック障害や社交不安障害は、薬物によって特定の場面を乗り越えることで自信がついていくことも多いようです。解離性障害は「薬物療法」に加えて「カウンセリング」も有効です。カウンセリングは感情に焦点を当てるので薄めていた感情が蘇ってくることが期待されます。しかしその反面、不調になっても過ごせる環境を用意しておくことが必要ですし、普段しないことをするので負荷がかかることが予想されます。また、解離性障害は治療を開始すると数週間前後、長めの睡眠を要する場合があると感じています。そのため「薬物療法」「カウンセリング」に加えて「一時的な休養」「就労支援などのケースワーク」を要する場合も多いようです。 もちろん、社交不安障害でもパニック障害でも薬物療法に加えてカウンセリングを導入して効果を上げる場合もあります。必要に応じて導入をはかっています。